7、らくがきに紛れた僕のキモチ

5/19
前へ
/112ページ
次へ
道路の上、足を抱えてうずくまった。 冷たさなんて感じない。 少しだけ積もっていた雪が、自分の血で赤く染まって溶けていくのを、痛みでぶっ飛びそうな意識の中、見た。 「俺あん時、鮫島は死んだかと思った」 「…生きてるよ?」 「ん。案外人間て、強いのな」 当たり所が良かっただけだって、医者が言ってた。 「綺麗な看護婦いましたかっ?」 「やたら奇跡を口にする、ロマンチストな看護婦なら」 笑いながら答えると、残念そうな顔をする間宮。 俺はそれどころじゃなかったんでね。 1つは、怪我の治療。 そしてもう1つは…―。 「あの席のお陰じゃない?」 「…ハハ、幸せの席に座ってたから?間宮は、俺に劣らずポジティブだな」 「どういうこと?」 「事故に遭ってからは、あの席こそアンラッキーなんじゃないかって思って」 「それは教卓の前の席だろ」 自慢じゃないけど、これまで一度も病院に掛かったこと無かったのに。 …まぁただ単に、何かのせいにしたかっただけなのかもしれない。 だって今年のクリスマスは、ケーキの代わりに点滴。 プレゼント、と親から渡されたのは文房具と教材の山だった。 この年で何か貰えるってのは、ある意味ラッキーなことなのかもしれないけど。 「昨日から新しい教室なんだっけ。今誰がアンラッキーなの?」 「んーとね。なんとかミウっていう女子」 なんとかって…。 「間宮。今のクラスメンバーももう2年目になるんだから、そろそろ名前覚えろよ」 「だってなぁ…いっつもあの子がミウちゃんミウちゃん、って呼んでるから」 振り返りながらそう言う間宮の頬が、緩んでる。 ……。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

452人が本棚に入れています
本棚に追加