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「………」
土方、山南、沖田は謎の沈黙になる。
たまらなく不気味だったが、芹沢から目を反らさなかった。
「先生、そろそろ…
雨が弱まっているうちに帰りましょう」
「うむ、そうしよう」
土方に促され、芹沢は飲み屋から出て行った。
芹沢の背中を見送ったのは、これが二度目である。
しかし今回の見送りは、何故かずっと目を反らせなかった。
傘をさす芹沢の姿が見えなくなるまで、見送り続けた。
「(…嫌な予感しかしない)」
虚しくも、その予感は的中することになる。
その日、芹沢と芹沢派の人間は、'何者か'に暗殺された。
屯所に帰宅した後、雨の日だというのに行われた犯行である。
翌日、屯所で立派な葬式が開かれた。
涙ながらに芹沢へ別れの言葉を語る近藤の姿に、隊士たちもまた涙を流す。
犯人は長州のものらしい。
誰かから流れ出た噂はたちまち屯所を包み込み、長州に対するやり場のない怒りを露わにする隊士たちがたくさんいた。
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