苦手なもの

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京の秋はとても美しく、見る者の心を清めさせる。 季節の移り変わりは早いもので、気づけば十一月になっていた。 美しい景観だからだろうか、最近は大きな事件もなく、平和な時間が流れていた。 美咲はというと、時代が違うことに対するぎこちなさもなくなり、すっかり幕末の時代に慣れてきた。 ほとんどの隊士たちとも交流を持てて、一人を除いて、平隊士にも受け入れられていた。 一人を除いて。 その、一人とは。 「………」 比較的隊士同士の仲の良い新選組という組織の中で、いつも一人でいる人物がいる。 この日も、朝でも賑わう朝餉の時間だというのに、一人で黙々と箸を進めていた。 斎藤一。 以前の隊の調整で、三番隊組長となった男だ。 友達がいないというわけではなく、ただ、一人でいるのを好んでいるようだ。 これで美咲とほぼ年が変わらないというのだから、驚きだ。
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