苦手なもの

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用があれば自分から話に行くし、誘われたら一緒に飲みに行くこともあるらしい。 しかし、こと美咲になると、徹底的に避けられる…気がする。 新選組に四ヶ月もいて、話したのが幕末に美咲が現れたときに、お前の服装はなんなんだ、という会話ともいえないものだけ。 最初は廊下ですれ違ったときに挨拶をしてみたが、一度も返されたことがなく、一切しなくなった。 美咲としては、面白くないことだ。 どうせ未来に戻るまでの間はここにいるのだから、せっかくなら仲良くなっておきたいのに。 しかしこの男は、朝食をさっさと済ませると、近くの者と談話を楽しむでもなく、広間を出て行ってしまった。 いつもなら見送るが、今日は意気込みが違う。 「ねぇ、ちょっと!」 今日こそは、何でもいいから会話をしたい。 広間から出て行った斎藤の背中を、慌てて追いかけた。
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