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「……み、美咲…」
顔に血液が集まってくるのを感じて、女から目を反らした。
…いや、反らせなかった。
女に顔を捕まれ、まったく動けなかった。
「ほら、ちゃんと言えたじゃん!」
笑顔で、俺の目を真っ直ぐ見てくる女。
心臓が跳ねた音がした。
同時に、今まで感じたことのない感情が芽生えた。
この気持ちは、なんだ?
「…え…あ、その…」
「これからも、下の名前で呼び合おうね
分かった?はじめ!」
女から…美咲から、目が離せない。
そうだ。
きっと、これが、好きという感情なんだ。
なんて気まぐれで、不確かで、暖かい感情なのだろう。
「…ああ、分かった…美咲」
俺の言葉に、美咲は嬉しそうに微笑む。
美咲の笑顔が俺に向けられていることが、嬉しいと思う。
…重症なのだろうか。
いや、もう構わない。
きっと今から、新しい生活が始まるから。
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