働く兄<1>

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バイクで10分程走り、駅前から続く大通りに出る。 青々と葉の生い茂ったいちょう並木の街路地の角に、周りの家やビルと雰囲気の違う建物が見えてくる。 壁や窓の枠も真っ白で、そこに深緑色のつると葉が被う西洋風の洒落た建物だ。 明るい緑色の看板に『cafe Canvas.』とあるように、《白いキャンバスに鮮やかな深緑色が散りばめられ、周りを囲む色とりどりの花壇の花が色を乗せている一枚の絵画》といったところだ。 俺はその店の奥にバイクを停め、店内に入った。 「おはようございまーす」 ドアに付けられたベルの音と俺の声を聞いて、正面カウンターの中にいたマスターが顔を出す。 「おぅ!おはよう十夜くん」 きちっと整えられた白髪混じりの髭の口元にシワをつくり、気さくな笑顔を返してきた。 いつもの朝のやり取りだったが、マスターの前のカウンターに座る人物に気付いて目をやる。 それは開店前に来てマスターと会話を楽しむいつもの常連客ではなかった。 高校生だろうか…? 制服を着たその少年も俺に気付いて振り向いた。
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