働く兄<1>

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「あぁ、悪ィ悪ィ! …なに、こいつの妹さんがちょうど2年くらい前に病気してな、手術もしたんだよ。 この兄さんはこう見えて妹さんのためにも稼いでるんだ、エライだろう?」 そう言って、マスターは俺の肩を叩いた。 「ちょっ…マスター俺の話は…。 ……ていうか今面接してんだろ?一応ぉ…」 「いいんだよぉ、もう雇うって決めたんだから!」 「早っ…!」 「バイトは初めてみたいだがな、今話してみてしっかりしてそうだし…、何より“絵を見る目”がある!」 「……は?」 その返答に、今度は俺がぽかんとする。 それをよそにマスターはにっこりと「そうだろう?」と少年を見る。 「はい…! 飾ってある絵画、少し見せてもらいましたが、本当に凝った素敵なものばかりで…! これ全部マスターが集められたんですか?」 「ああ! 昔からコツコツ集めた物ばかりでねぇ、家の倉庫にはまだまだあるんだよ!」 「へぇ、すごいですね! 俺、それも見たいです!」 「ハハハっ、そうかそうか! 今度ゆっくりアートを語り合おうじゃないかっ! ハハハハ!」 「………。」 はぁ…、また始まったか、と思った。
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