働く兄<1>

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俺を含め3人のウエイターでホールとカウンター、厨房を行き交いし、ランチ時の賑わう中休むことなく仕事をこなす。 しかし、そんな忙しい中でも笑顔が絶える事はなかった。 勿論サービス業としてお客に笑顔で接するのは当り前なのだが…、それ以前に、ここでは自然と笑顔になれたのだ。 美味しい料理を口にして笑顔になるお客さんも、マスターや奥さん、仕事仲間達のと会話や他愛のない話……。 それら全部が俺にとっては凄く『あったかいモノ』で、とても楽しい。 「ごちそうさまでした!」 先程まで食事をしていた男の子が俺に声をかけてきた。 にかっと笑った口元にはソースが付いたままだった。 「よっしボウズ! また来いよなっ! またいっぱい食べろ!」 「うん!」 男の子は母親に口元の汚れを紙ナプキンで拭かれ、席を立った。 笑ってこちらに「バイバイ」と手を振る男の子に、俺も笑顔と共に手を振って返した。
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