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「ごめんね、薬もらうの待ってる人が多くて…」
「はぁ…、待ちくたびれちまったよ」
少し息を上げて謝る妹に向かって、わざとオーバーに疲れた表情を見せる。
「…なーんて、冗談だ冗談!」
にかっと笑って見せて、からかわれた方の妹も、まったくもう!と怒った顔をして、また笑う。
「さぁて…雨も止んだし、帰るか」
「うん」
そう言って、差し出されたヘルメットを被りバイクの俺の後ろにまたがった。
「ねぇお兄ちゃん、今日もあそこに寄ってくれる?」
「あぁそうだな、仰せとあらば何処へでもお連れしますよー?」
いつもの兄の冗談に妹は再び笑みをこぼす。
「じゃ、行くぜ」
バイクのエンジンをかけて、鮮やかに輝く紫陽花の花達の中を走り抜けた。
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