海と兄妹

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――俺は黒宮十夜(クロミヤ トオヤ)。 年齢:22歳。 肩書き:兄貴。 家族構成:俺と妹。―― オレンジ色のライトが灯った長いトンネルを抜けて外に出ると、青い空が目の前に広がった。 先程よりも雲が消えていて、日差しも強くなってきた。 暗い所から出たばかりで日差しをより眩しく感じる中、空に見つけたそれを後ろの妹に叫んだ。 「紗夜(サヤ)!前見てみろ!」 突然呼ばれた紗夜は、前方をさえぎる俺の背の左横から顔を出して空を見上げた。 「うわー! 綺麗…!」 青い空に残った白い雲から虹が見えていた。 今まで見てきた中でも鮮やかな方のその虹は、小高い山々の間から見えてきた海にまでかかり、まるで空と海とを繋ぐ架け橋そのもののようだ。 陽の光がまだ雨露の残った木々と海に反射して、その光景をより幻想的にさせる。 「あともう少しで着くぞ!」 次第にはっきりしてきた潮の香りと海の風を切りながらアクセルを踏んだ。
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