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弟が寄越したメールには、本当に「気を付けろ」の一言だけだった。
もしこれを見ていたら、きっと本当に気を付けていただろうと思う。
なんの文脈もなくソレだけを送る時は、間違いなく『何か』を弟が感じたからだと私は知っていたから。
所謂、虫の知らせという奴だ。
「でも気を付けろって、何に気を付ければいいのか分かんないじゃん」
「内容なんか知るかよ。兎に角「気を付け」ればいいんだから。要は気付く。床が滑るなんて正にソレじゃん」
「…今日は朝の占いで水難の相なんて出てなかったもん」
「あーあーバカだ。水難の相って一般的に『水』って勘違いしてる奴多いけど、それ、間違い」
「そうなの?」
水難の相って、例えば洪水とか津波とか、水に関係した被害の事を言うんじゃないのだろうか。
そう思って口に出したら鼻で笑われた。
(クソ腹立つ!!)
「水難の相って…えーっと、確か仏教の観音経の言葉から来てるんだよ。」
「観音経?」
「般若心境は分かるよね」
「南無阿弥陀仏?」
「それの兄弟みたいなモン。意味は反対だけど」
適当にも程がある!!
文句を言えば「そんなに興味無いんだもん」とスパッと罰当たりな事を言った。
ので、私は大人しく聞いてる事にする。
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