『右側』

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境内の中は、なんとなく肌寒いような気がしていた。 それは『気づいてしまった』からで、何も知らない状態なら何とも感じてはいなかっただろうと思う。 私は随分と単純な人間だ。 神社の鳥井を過ぎて、本殿に上がる為の階段がある場所を右に曲がり小路に入る。 そこは何もないスペースだが、子供心にそのこじんまりしたスペースが秘密基地のようで、よくここで遊んだものだと懐かしくなる。 そういえば… 「ねぇシュン。ここで蛇見付けたの覚えてる?あの黄色っぽい蛇」 図鑑で調べたりしたけど、同一だと思われる種類を見つける事が出来なかった。 記憶は薄れているけれど、黄色と白を混ぜたような色をしていて。長さは多分30cm(子供目線だから、今から思えばもっと小さかったのかもしれない) 今も昔も爬虫類は嫌いじゃなく、余裕綽々で掴んじゃうような子だった私は その蛇を見て、変わった物を見付けたと大喜びだった。 今更ながら毒があったらどうするんだとも思うが、臆する事なく掴み上げて友達やシュンと喜んでいたなあ。 そんな思い出話をしている横で、シュンはその大きな鞄から何やら色々取り出していていた。 取り出したのは、木彫りの小さなリスの人形。 そして、太めで1mぐらいある縄。 …縄。 「シュン…姉ちゃんにはそんな趣味はないよ」 「……」 冗談なのにものすごく睨まれました
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