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痛みで涙が出てきて、縄が本当に蛇のような気がしてくる。
蛇は、獲物を締め付けて殺すのだ。
「痛いっ痛いィィっ!ごめんなさいっごめんなさい!!」
何に対して謝ってるのか分からないのに、私はひたすらに謝罪し許しを請うた。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!
「…姉ちゃんは悪くないよ。
悪いのは、無視してた俺だから」
シュンが顔をしかめてそう言った。
「…ねえ、俺は何も力は無いよ。だからお前をどうにかしてやる事は出来ない。これで勘弁してよ」
シュンはそう呟くと、持ってきていたリスの置物を私の右腕の下らへんにそっと置いた。
「…こっちが獲物だ。そのヒトは、喰えない。何もしてやれない」
「…ごめんなさいっごめんなさい!」
私はひたすら謝っているだけだった。
「こっちへ移れ!!」
シュンが怒鳴った。
まるで私が怒られたような気がして、びくっと身体を震わせる。
すると突然。
ふっと右腕の締め付けが緩んだような気がした。それに慌てて身体を起こすと、
「姉ちゃんは動くな」
シュンに念を押され、縄を剥がそうとした左手が宙を掻く。
シュルシュルと、蛇が置物に移って行くような気がした。
勿論気だけで、私には何も見えない。
ただジンジンと血が指先に巡っていく感覚だけは分かった。
そうして漸く、縄がはらりと地面に落ちた。
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