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少女が閉鎖された扉を叩く。
「出して、出してよー!このっ、このやろっ!開きなさいよー!」
こりずにさらに叩き続ける。
見かねたクロニカが少女へと近づいていく。
「開けって!開きなさーい!もう!ほんと、いい加減にしてよ!……はぁ」
ため息をついている少女を見て苦笑し、足を進めるクロニカ。
「……だから帰ろうっていったのにさ…ここはやばいって、あれだけ行ったのになんで聞いてくんないかなぁ……」
落ち込んでいる少女の後ろで立ち止まって、声をかける。
「まぁ、信じられないことかもしれないよね」
「誰?」
少女は驚いて、背後のクロニカを見た。
クロニカは笑顔でこんにちは、と挨拶をしてみる。
「ああ、そっか、閉じ込められちゃったのあたしだけじゃないんだね」
ガッカリしたように言う。
「なにが起きたかってわかる?」
「あ~生憎、いろんなことがあったけどこんなこと初めてで…」
頬を掻きながら笑うと、うなだれる少女。
「……わからないよね、あたしも、いきなりでそれどころじゃなかったし…気がついたら、みんなは逃げ出してるし…はぁ、どうしたらいいんだろ」
そう呟いて下を向く。
「まぁ、行こうか」
そう言って踵を返すと、少女がクロニカの服を掴む。
「きゃっ!」
ビックリして止まると、少女を見る。
少女もビックリしているようだ。
「まさか奥に進む気?」
「そうだけど」
当然という風に言う。
「無理無理!やだやだ!危ないって!ここ、未開のレリクスなんだよ?すっごい危ないんだよ?」
それは百も承知なのだが、少女が嫌なようだ。
「じゃあ、ここで待っててくれる?助けを読んでくるから」
極めて優しく諭したつもりだが、少女が悩む。
頷くと、少女がクロニカの顔を見つめる。
「行くから!あたしもいっしょに行く!」
そう言って頷く少女に、クロニカも頷き頭を撫でた。
「あ、そういえば名前、聞いてないんだけど……」
言っていなかったと気づいくと、自分の胸に手を当てる。
「クロニカ・レメディアだよ」
何度か名前を呟く少女。
「あたしはエミリア、エミリア・パーシバル」
「うん、よろしくねエミリア」
もう一度頭を撫でると、戸惑いながらエミリアは口を開いた。
「えっと、その……これからしばらくは一緒だから……よ、よろしくね」
こうしてクロニカとエミリアが出会った。
この出会いがどうなるとも知らず。
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