奪われる寿命

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そうだ、と思い付いたように手をぽんと叩くティナ。メガネの男は首を傾げて見守っている。 「あれは襲ったんじゃない、戯れたんだ」 うんうんと数回頷いたティナだが、そんな事で納得出来るはずもない隊員達は怒りの表情を露わにした。 「そ、そんな無茶苦茶な言い訳が通る訳ないでしょう!? 全く、大人しく同行して下さい」 一つ咳払いを入れて真剣な眼差しを作るメガネの男。ティナによって当初のテンポを失っていた機動隊員達だったが、男に釣られるように自らを引き締めた。 「嫌だ、と言ったら?」 そこに投入される言葉の燃料。一気に加速していく場の緊張感。 「残念ながらエスコートという訳にはいかなくなりますかね」 「断る!」 数十秒ほどの無言の後、言葉と共に走り出したティナ。その先は隊員達でもメガネの男でもなく、乗り場の先にある崖。 下に広がる街並みに向かい大きく飛び込むティナに隊員達は唖然とした。
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