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追っ手の確認等必要なさげに思えたが、遥か向こうに見える第一民衆区域側のゴンドラ乗り場に視線を向ける。
そこには既に機動隊の姿はなかったが、追って来ている気配もまた、なかった。
「……全く、墓参りくらい静かにさせて欲しいものだ」
まるで自分に非がないと言わんが如く深い溜め息を吐き出して民家の屋根から飛び降り、裏路地を歩いていくティナ。
しかし今回の原因は機動隊の常識的な取り締まりにティナが暴れ出したというもので、彼女は非の塊でしかない。
そんな事はお構いなしなのだろう、どんどん狭くなっていく路地を迷う事なく抜けていき、中心街から遠退いていく。
やがて開けた場所にたどり着くティナ。芝生が敷かれて、たくさんの墓石が佇む墓地。
御供えもない墓石達の前をすり抜けて、一番奥の比較的新しい墓石で足を止めた。
「……ウェバー。次は君なのか……。理不尽な死を強いられ、昇華とは名ばかりに可能性を奪われる。定められた刻の中でしか私達は生きられない。こんな物が、人の死を決定する……全く無意味な死だと言うのに、誰が否定する事もない」
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