奪われる寿命

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さてと、と少年はスカーの眼前に立ち微笑みを浮かべたまま首を傾げる。 「本当は僕も心苦しいんだよ? 仲間を手に掛けるという事は。だけど君を生かしておくことは世界の混乱を招く事と同義、仕方ない事だと理解してくれると助かるよ」 ゆっくりと、少年の右人差し指がスカーの額に向けられる。 恐怖のあまり動けないティナは、固唾を飲み込みながらガタガタと震える身体を必死に押さえ込んだ。 少年の指先から、赤黒い液体が一粒湧き上がり、空中に静止する。 その粒は白く輝きを放ち始め、ティナの顔が青ざめていく。 刹那、何もかもを飲み込む白い光が粒から放射された。 壁も、床も、何もかもを飲み込んでいく光。塔の一部を削り取るように破壊した少年のオーバーレリック。赤黒い液体の前に残った物は既に日の沈んだ空だけだった。
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