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「い……痛い! 痛いぞアルクス殿!」
安っぽいベッドに横たわる雪のように白い長髪の女性。程良い肉付きで、思わず魅とれてしまうような体型の彼女はそれを全面に出すような丈の際どい青い短パンにシルエットが浮き出る程ピッタリとした黒い皮のジャケットを着込む。
うつ伏せのままベッドの端をぐっと握り締め、痛みに堪えている彼女の足元ではカチャカチャという金属音がなっている。
「全く、無茶な使い方をしおって。見てみぃ! 制御コアが悲鳴を上げとる!」
そんな彼女の脚を思いっきり叩くアルクスと呼ばれた大柄の男。熊のような体型に、瞳の色すら見えない濃いめのゴーグルと繋ぎ作業服という職人風貌な男は瞬く間に彼女の脚をバラしていく。
彼女の脚は、レリックと呼ばれる機械仕掛けなのだ。レリックは全ての人間が例外なく持っている生命維持装置。これにより人類は百年にも満たなかった寿命を大幅に伸ばし、さらには治癒力までもが向上した。
彼女の場合、爪先から膝までを完全に銀の金属が覆うアーマーレギンスのような攻撃的外見だが、必ずしもそうではなく、装着部位や形、運動能力や機能性は人により異なる。
例外なく共通するのは、制御コアと呼ばれる動力源が露出している事と、制御コアを失ったレリックは機能を停止する事。
「そ、そんな事を言われてもだな「機動隊相手に喧嘩なんかふっかけるからでぃこの馬鹿もんが!」
女性は痛みに堪えながらも必死に弁解しようと紡いだが、アルクスはすぐさまその言い訳を塞ぎ、青白く輝く制御コアに触れた。
「……出力が低下してやがる。どうせまたオーバーレリックを使ったんだろう」
「う……」
びくりと身体を反応させて引きつった笑顔を浮かべる女性に、溜め息を吐き出すアルクス。
制御コアがレリックに供給している駆動エネルギーを極限に圧縮して外部に放出するオーバーレリックは、制御コアに著しいダメージを与える。
そのため出力限界を超えた制御コアは一時的に機能を省力化し、自己修復に入るのだが、この際の損傷率によっては修復が不可能な場合があり、彼女の場合がそれにあたるのだ。
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