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「……ほれ、終わったぞ」
女性の言葉に何も言えなくなってしまったアルクスは手短に作業を終わらせるとそっと彼女から離れていく。
「……ん、すまないアルクス殿。次はもっと軽微になるよう努力する」
「壊さねぇ努力をしやがれってんだ」
女性はベッドに腰掛け脚の駆動を確かめながら、少しだけ微笑み発する。その声に間髪入れずアルクスのツッコミ。
「まぁ、善処する」
ガッと勢いよく立ち上がり店を後にしようと歩を進める女性。
「おめぇさんには泣かされる。パーツってのは替えがきく。壊れちまったら替えればいいんだ」
古びた押し扉に手をかけた女性に向かい、彼女のレリックから取り外したギヤを手のひらで観察しながらアルクスは呟く。
「だがな、おめぇさんはそうじゃねぇ。替えもいなけりゃ直す事も出来ねぇ。あんまり無茶をするんじゃねぇぞ」
「……神(レリックコア)に取って私達等、歯車に過ぎない。だから壊れていらなくなれば取り除く。そして、壊れぬ歯車等存在しない」
最後の一言に合わせ扉をくぐっていく女性。その背に深い溜め息を吐いてアルクスは頭を掻いた。
「……神は残酷だな。おめぇさんみたいに優しい奴から、全部――奪っちまったんだから」
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