奪われる寿命

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街を行く人々の間をくぐり抜けていく女性。直ったばかりの脚は漸く機能を回復し、スキップ程度ならば容易にこなせそうだ。 しかしながら彼女の脚は、修理を終えて間もない所謂慣らしの状態にある為あまり無茶も出来ないなと此処に来て漸くアルクスの心配がほんの少し実を結び、ぼんやり思う。 すれ違う人々の身体には至る所にレリックが見受けられ、この世界がいかにレリックコアの手中にあるのかと女性に考えさせる。 人混みの多い表通りを抜けると、高さ数十mもの段を付けて区別されている隣区、第二民衆区域へと向かう為裏路地を歩いていく。 どういう意図でこのような地形になったのかは定かではないが、彼女の居る第一民衆区域と第二民衆区域を行き来するには、ゴンドラに乗る必要がある。 まるで谷底に降りていくかのように錯覚するほど、その高さの差は大きなものだからだ。 女性がゴンドラ乗り場に到着すると、見晴らしのいい乗り場からは第二民衆区域の街並みが一望出来た。 谷底と表現するには随分見事過ぎる鮮やかな街並みに、女性は少しはにかむ。
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