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振り向いた瞬間、私の心臓は大きく鐘を打ち、そのまま止まりそうになった。
掲示板でのチャットでウサギは敬語口調でお淑やかな20、30代の女性という印象がであった。
しかしどうだろうか?
今、目の前で満面の笑みを浮かべて私達を見上げているのは年端も行かない小さな可愛らしい女の子ではないか。
クリクリした瞳。茶がかった前髪を二つに分けて頬まで垂らし、長い後ろ髪をリボンで束ねたその愛くるしい幼い顔。
薄緑のワンピースから伸びるまだ短い手足、背丈だけを見れば小学校低学年といった所だ。
「え……」
「えぇ……」
余りにも幼いウサギの姿に私達は顔を見合わせて脂汗を垂らした。
「いやいやいや。ウサギはもっとこう……えぇぇ」
「そうそうそう。ウサギはもっとそう……えぇぇ」
彼女の背負ったリュックサックに光る金色のベル。季節感のないマウスの風鈴。私のくすんだ黄色い鈴。
それらが秋風に揺られて静かに三重奏を奏でた。
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