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十本槍の焔と相対した時でさえ感じなかった、命の危機。
それを今、自分は確かに感じている。
────興奮の一表現として。
「神とはね、未来ちゃん。傲慢なんだよ」
「んー……?」
いきなりの抽象的な言葉に、未来は静かに立ち上がりながら首を傾げる。
「神さまはぁ、みんなのお願いを聞いてくれるんじゃないのぉ?」
「ならば神は、どうやってその願いを叶えるのかな?」
咲羅は浅く両手を広げると、背中に魔法陣を描出した。
円形の巨大な魔法陣は、中心から放射状に直線が引かれていた。
それは仏が背負うに相応しい、後光を示した光輪。
強い光を伴うその様はまさに神そのもの。
しかし未来が彼に感じるのは、純粋な狂気だった。
「神は優先されるんだ。人々の願いを叶えるという大義名分の下、ありとあらゆるを統べることができる」
咲羅はふと、未来を人差し指で指す。
見れば彼女の手には得物である魔杖が握られていた。
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