第11章

78/181
前へ
/1438ページ
次へ
十本槍の焔と相対した時でさえ感じなかった、命の危機。 それを今、自分は確かに感じている。 ────興奮の一表現として。 「神とはね、未来ちゃん。傲慢なんだよ」 「んー……?」 いきなりの抽象的な言葉に、未来は静かに立ち上がりながら首を傾げる。 「神さまはぁ、みんなのお願いを聞いてくれるんじゃないのぉ?」 「ならば神は、どうやってその願いを叶えるのかな?」 咲羅は浅く両手を広げると、背中に魔法陣を描出した。 円形の巨大な魔法陣は、中心から放射状に直線が引かれていた。 それは仏が背負うに相応しい、後光を示した光輪。 強い光を伴うその様はまさに神そのもの。 しかし未来が彼に感じるのは、純粋な狂気だった。 「神は優先されるんだ。人々の願いを叶えるという大義名分の下、ありとあらゆるを統べることができる」 咲羅はふと、未来を人差し指で指す。 見れば彼女の手には得物である魔杖が握られていた。
/1438ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加