第11章

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全身が神格化され、圧倒的攻撃力を得ている未来の突貫だ、咲羅も無視することはできない。 しかし、自滅を避けるために砲撃の勢いは先程よりも衰え、攻撃も体術が主だ。 “落ち着け、慌てるな。ここから主導権を奪え” 「攻撃手段においては、【天殲恋華】の右に出るものはない」 ふと、咲羅は聞く。 耳慣れない未来の冷徹な声音は、背後から。 しかし彼の視界は確かに正面へ未来を捉えている。 「!?」 黒の魔力兵装に影響され黒髪黒目となった未来。咲羅はそんな彼女の右目だけが紫に輝いていることを見逃さなかった。 黒。重力。十本槍。紫。背後。 単語は繋がり、1つの結果を導く。 「──……!!」 口に出す時間すら惜しい。 咲羅は急ぎ魔法陣を展開すると、転移魔法で正面へ跳んだ。 未来と立ち位置を入れ替える形となった咲羅。 彼が先程まで立っていた場所は、2人の未来によって床に穴が開かれていた。 「「あーあ、さっちゃん先輩逃げないでよぉ。未来ちゃん、早くるーちゃんに会いに行かなきゃなのにぃ」」 二重に聞こえる未来の声は本当に残念がっているようには聞こえず、むしろ楽しんでいるようにすら感じる。 「──……楽しそうだね、未来ちゃん」 咲羅が無理矢理に苦笑をこぼすと、未来は満面の笑みで首を振った。
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