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「「「ぜーんぜん?」」」
咲羅が聞いた未来の声は3つ。
「ッ!?」
強烈な違和感に振り返ると、2メートルもない至近距離に未来がもう1人現れていた。
彼は体ごと振り向いたつもりでいたが、実際には足が固まっており背後に向いていたのは顔だけだった。
「「「楽しくないよぉ。未来ちゃん、さっちゃん先輩の気持ちがわからないんだもん」」」
いつの間に分身を作り出したのか、という疑問に思考を巡らす暇もなく、未来の声が響く。
「僕の気持ちだって?」
咲羅の静かな声音に、未来は緊張感を感じさせぬ明るい声でいった。
「だって、本当はさっちゃん先輩、戦いたくないんじゃない?」
「──……」
咲羅はその瞬間、悟った。
これはこちらの気持ちを見透かしたものでは決して無いことを。
何故なら彼女の口元に、確かに笑みが浮かんでいたのだから。
挑発。
美少女と呼んで差し支えない未来が浮かべるその笑みを、咲羅は場違いにも美しいと感じていた。
「ごめんね。でも【天殲恋華】は全魔眼中最強だよ? 他人へ術式を渡すことになる僕は不利────」
「そういうことじゃないもん」
未来は彼の言葉を遮り、咲羅の眉間を指差した。
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