第11章

87/181
前へ
/1438ページ
次へ
「「「ぜーんぜん?」」」 咲羅が聞いた未来の声は3つ。 「ッ!?」 強烈な違和感に振り返ると、2メートルもない至近距離に未来がもう1人現れていた。 彼は体ごと振り向いたつもりでいたが、実際には足が固まっており背後に向いていたのは顔だけだった。 「「「楽しくないよぉ。未来ちゃん、さっちゃん先輩の気持ちがわからないんだもん」」」 いつの間に分身を作り出したのか、という疑問に思考を巡らす暇もなく、未来の声が響く。 「僕の気持ちだって?」 咲羅の静かな声音に、未来は緊張感を感じさせぬ明るい声でいった。 「だって、本当はさっちゃん先輩、戦いたくないんじゃない?」 「──……」 咲羅はその瞬間、悟った。 これはこちらの気持ちを見透かしたものでは決して無いことを。 何故なら彼女の口元に、確かに笑みが浮かんでいたのだから。 挑発。 美少女と呼んで差し支えない未来が浮かべるその笑みを、咲羅は場違いにも美しいと感じていた。 「ごめんね。でも【天殲恋華】は全魔眼中最強だよ? 他人へ術式を渡すことになる僕は不利────」 「そういうことじゃないもん」 未来は彼の言葉を遮り、咲羅の眉間を指差した。
/1438ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加