カフェ

4/4
前へ
/19ページ
次へ
「ああ、唯さんも来ていたんですか?」 甘い殺人的な声が、私に向けられる…ミルクティーを持つ右手が、小刻みに揺れているのが分かった。 どうした…今日こそ声をかけるんだ、一言でいい、会話をするんだ。前からそう決めていたではないか、だから私は、ミルクティーが入っているカップが今にも割れそうなほどに力を入れて、やっと言葉が出たんだ。 「お、おはようございます!今日の授業は何時からですか?」 斗真はその質問に、一瞬きょとんとした表情を見せたが、すぐにいつもの殺人的な甘い顔に戻った。 「午後に歴史の授業があるよ、唯さんは学校行かなくていいの?とっくに遅刻のはずたよ?」 「あ、はい!今すぐに!それじゃあごちそうさまでしたあ!」 私は飲みかけの熱いミルクティーを一気に喉に流し込んだ。 喉を火傷するかと思ったが、我を忘れて、鞄片手にその場を走り去るのがやっとで、喉の心配なんてしていられなかった。 山本唯がカフェから走り去った後、気を取り直したかのように、マスターが言った。 「さて、ここいらで通り魔事件が横行していることは知っているだろ?斗真君、あの娘はその事件を追う、どうだい?ここらで探偵勝負ってのもおつなもんじゃないかい?」 「通り魔?それは物騒な…マスターも勝負事が好きなようで… 津田斗真は、そこで一旦沈黙した。 そして、カウンターのコーヒーを一口飲み、不気味な笑みを浮かべて言った。 「分かりました。」 と、余裕な表情を見せて。 あの不気味な笑みは、気のせいか…はたまた…
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加