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「ああ、唯さんも来ていたんですか?」
甘い殺人的な声が、私に向けられる…ミルクティーを持つ右手が、小刻みに揺れているのが分かった。
どうした…今日こそ声をかけるんだ、一言でいい、会話をするんだ。前からそう決めていたではないか、だから私は、ミルクティーが入っているカップが今にも割れそうなほどに力を入れて、やっと言葉が出たんだ。
「お、おはようございます!今日の授業は何時からですか?」
斗真はその質問に、一瞬きょとんとした表情を見せたが、すぐにいつもの殺人的な甘い顔に戻った。
「午後に歴史の授業があるよ、唯さんは学校行かなくていいの?とっくに遅刻のはずたよ?」
「あ、はい!今すぐに!それじゃあごちそうさまでしたあ!」
私は飲みかけの熱いミルクティーを一気に喉に流し込んだ。
喉を火傷するかと思ったが、我を忘れて、鞄片手にその場を走り去るのがやっとで、喉の心配なんてしていられなかった。
山本唯がカフェから走り去った後、気を取り直したかのように、マスターが言った。
「さて、ここいらで通り魔事件が横行していることは知っているだろ?斗真君、あの娘はその事件を追う、どうだい?ここらで探偵勝負ってのもおつなもんじゃないかい?」
「通り魔?それは物騒な…マスターも勝負事が好きなようで…
津田斗真は、そこで一旦沈黙した。
そして、カウンターのコーヒーを一口飲み、不気味な笑みを浮かべて言った。
「分かりました。」
と、余裕な表情を見せて。
あの不気味な笑みは、気のせいか…はたまた…
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