進展

5/8
前へ
/19ページ
次へ
カランカランと、仕方なく音を立て、私の来店を店内全土に知らせる。 カウンター、いつも私が座る隣の席に、斗真さんは居た。 誰かが来店したことを知ると、斗真さんは必ず、コーヒー片手に、首を後ろに向けて一体誰が来たのかを確認する。 それが彼の癖というのは知っていた。 「こんにちは」 斗真さんは、来店した人物が私だと知ると、驚くことに、私に向かって言葉を発した。 私は初め、後ろの誰かに話しているのだ、そう思った。 しかし、後ろを振り向いても誰もいない、ついに、斗真さんが「ははは、可笑しなお方だ、あなたのことですよ…山本唯さん?」 「こ、こんにちは、あの…」 私は言葉に詰まった。ドキドキして胸が熱くて頭が真っ白だった。 「どうしたんだい?そんな固まっちゃって、それより例の事件、互いに解決し合わないか、協力しつつどちらが早く解決するか、勝負しよう」 「あの…通り魔事件ですか?」 私は、余りに予想外な斗真の発言により、きょとんとしてその場を動けずにいた。 もしかして、私の顔は、ほんの一瞬、馬鹿らしく、口をポカーンと開け、目は何処か分からない場所を見つめていたかもしれない。 もしそうなら、私は相当恥ずかしい。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加