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カランカランと、仕方なく音を立て、私の来店を店内全土に知らせる。
カウンター、いつも私が座る隣の席に、斗真さんは居た。
誰かが来店したことを知ると、斗真さんは必ず、コーヒー片手に、首を後ろに向けて一体誰が来たのかを確認する。
それが彼の癖というのは知っていた。
「こんにちは」
斗真さんは、来店した人物が私だと知ると、驚くことに、私に向かって言葉を発した。
私は初め、後ろの誰かに話しているのだ、そう思った。
しかし、後ろを振り向いても誰もいない、ついに、斗真さんが「ははは、可笑しなお方だ、あなたのことですよ…山本唯さん?」
「こ、こんにちは、あの…」
私は言葉に詰まった。ドキドキして胸が熱くて頭が真っ白だった。
「どうしたんだい?そんな固まっちゃって、それより例の事件、互いに解決し合わないか、協力しつつどちらが早く解決するか、勝負しよう」
「あの…通り魔事件ですか?」
私は、余りに予想外な斗真の発言により、きょとんとしてその場を動けずにいた。
もしかして、私の顔は、ほんの一瞬、馬鹿らしく、口をポカーンと開け、目は何処か分からない場所を見つめていたかもしれない。
もしそうなら、私は相当恥ずかしい。
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