1章.パンドラの匣

4/50
前へ
/52ページ
次へ
山本は大和帝国管領大臣となり、日本の政体を覆した。 今までの日本は『民があってこその国である』というものだったが、山本はそうは思わない。 『この世で一番偉いものは強者、言わば力ある者である。そして強者こそが弱者を守ることで世界に平和をもたらすのだ。……ならば、この世界をまず“弱者”と“強者”にわけなければならない』 そうして始まった軍事開発は大和帝国を最強の武力国家に築き上げ、そして世界に宣戦布告。 第4次世界大戦、しかもそれは大和帝国が一方的に世界を敵に回すものであった。その時、帝国民だけではなく他国の者さえも、今度こそ侍の国は幕を閉じる、と誰もが思っていた。 だがそれは、杞憂に過ぎない。むしろ悲劇である 気づけば、世界は大和帝国にひれ伏していた。 いったい何をしたのか、何をされたのか。 分かるのは一つ、山本雅史は“何か”を使い、世界を翻弄させていた。 全ての情報を誤算させ、電子機器を制御し、人工衛星を停止させ、空を制圧。 山本はまず、ネットワークを制圧していた。 情報社会にとっては諸刃の剣であり、ボタン一つでミサイルを飛ばせるような、そんな国も存在する。だからこそネットワークの制圧はどの世界でもかなりの損害であった。 ミサイルを飛ばせば自軍の軍基地に落ち、戦闘機を飛ばせば座標情報が正確でないため目的地へ迎えない。 そう、既に世界は山本雅史という男の手の上にあった。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加