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昼間とはいえ、鬱蒼と木々の繁ったイフェメラの森は、陰鬱な影を湛えていた。
その中で響く叫び声。
「うわあぁぁ!!」
「おや、またですかぁ?」
妖獣クロミカゲグモの糸に絡まり、もがくイライ。
糸は、直径が5センチほどの太さで、人間はおろかその数倍の妖魔妖獣の類いで千切れぬほどの強度を誇っていた。
「動かないでくださいね。」
アスールは、低く呟くと杖の先端を糸に当てる。
すると、糸は焼ききれたかのように、変色してブチブチと千切れた。
「これで、私は君の命の大大大大恩人くらいになりましたねぇ。」
肩で息をするイライに、アスールが楽しそうに話しかけた。
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