10306人が本棚に入れています
本棚に追加
/800ページ
「魔具の賢人エミエル。」
大賢者にその名を呼ばれ、一人の賢人が進み出た。
口ひげを蓄えた中年のその男は、目の下に隈を作り、げっそりと窶れていた。
「ベルが作った魔力を吸い取る魔具に対抗できる魔具を作ることはできましたか。」
「見つけ次第即刻破壊できれば一番よいのでしょう。しかし、自らが取り込まれぬよう結界を張りながらの作業ゆえ、可能な者は限られております。」
「でしょうね。」
アスールも、その魔具を観察し破壊する時には自分と魔具の周囲に結界の呪文をかけていた。
それができる魔法使いは限られている。
レイゼルに残っている優秀な魔法使いならいざ知らず、ある程度の魔法を習得して世界中に散った者たちが、容易く近づけるものではない。
現に、これまで数多くの魔力を失った魔法使いたちからの悲壮な訴えが多数レイゼルへ届いていた。
最初のコメントを投稿しよう!