エピソードPrologue

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古来より……人々は闇を恐れる者だ。 だが闇その物を恐れるのでは無い、闇に潜む何かに恐れるのだ。 その闇に潜むのは、人々に牙を向ける魔物『ホラー』だが光と闇は一体。 光がある所に闇がある、闇がある所に……光は必ずある。 ホラーと言う闇に立ち向かう光は、魔戒の力を得た魔戒騎士と言う戦士だった。 その魔戒騎士の名は……… 『牙狼』<ガロ>、黄金の鎧を身に纏い、狼を思わせる外観にホラーは恐怖を思わせた。 何故なら彼の勇姿はホラーの大群にたった一匹で立ち向かい全滅させた金色の狼を思い出させるからだ。 彼の持つ剣は因果の闇を断ち切り、魔戒より生まれし黄金の馬を操り、金色の翼を生やしたその姿は人々は翼人<つばさびと>と呼んだ。 そして牙狼は自らを巨大な金色の狼と化し、ホラーを全滅させ、その姿を消した。 牙狼の存在は謎に包まれ、あまつさえ実在したかどうかも不明である。 戦乱の時代を希望を捨てず生き抜く為に人々が作った夢物語か……それとも面識した古来の王達が彼の勇姿を来世に伝える為に残した書籍か、それは誰にも分からない。 だが、牙狼の存在が人々に希望を与えたのは事実とも言える。 希望の意味を持つ名の通り、彼の存在は人々に生きる希望を与えたからだ。 ミッドチルダ無限書庫の本No.18652『牙狼の伝説』より。 「ふう……」 一息付いた後読んでいた本を閉じ背伸びをすると窮屈そうな骨音が鳴りちらりと机に置かれた可愛いらしいデザインの置き時計に目を向ける。 時計の短い針は九時を刺し長い針は六を過ぎた九時半過ぎ、少女にとっては遅い時間だった。 「もうこんな時間……読みすぎちゃったなぁ」 最初は少しだけと思いつついざ読んでみたら面白くて読書欲をくすぐられ最後まで読んでしまったのだ。 「牙狼か……この人が来てくれたらママ達を助けてくれるかな、クリス」 机に置かれて……いや、座って少女と共に本を読んでいた可愛いらしいウサギのぬいぐるみ、クリスこと『セイクリッド・ハート』は頷く。
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