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気まずい雰囲気を払拭したかったから、わざとらしい位に笑ってみた。
「さっ。優が待ち切れないって騒いでるから」
プンプン顔だった佐倉の腕を引っ張り歩き出した。
どさくさに紛れてだけど、かなり締まりのない顔していたかも。
中に入ると、どさくさ紛れに掴んだ腕に優が気付き、わざとらしく言った。
「おい尊!!真琴と腕組むなんて許さないぞ」
言うより早く優が割り込んで来た。
「真琴はおれと繋ぐの!」
そしてオレだけに聞こえる声で囁く。
「尊はこれからも一緒にいれるんだから、今はおれに譲れ!」
優は拗ねたような顔をしたかと思うと、ウインクしてみせる。
こいつ、マジで佐倉狙ってないか? と、思わず笑みが漏れた。
「こっちだよ」
優は一人前に佐倉をエスコートしている。
その様子にみんなの顔がほころぶ。
やっぱり優の存在は貴重だ。
こうも簡単に佐倉を笑顔にする。
優は佐倉の隣の席に座り、オレは正面に座った。
暖炉の火にかけた鍋からポトフを取り分けた。
新鮮野菜は、素材を生かす為あえてシンプルな料理にした。
ソーセージと野菜を取り分けながら、優に人参を入れると渋い顔。
「おれ人参嫌いなの~」
子供らしい言葉に「ダーメ。食べなさい」と おでこをつついてやった。
「だって~。真琴だって食べてないよ」
確かに…以前苦手だと言っていたが…
器を見ると――あっ、残してる。
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