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優は、これで食べなくて済むと思ったようだが…
苦手で残してる佐倉を前に、食べろといいにくい。
それを察したのか、佐倉は無言で器の隅の人参をすくうと、優の顔を見ながら…パクリと食べた。
僅かに渋い顔で、それでも少し偉そうにしている。
そんな所が可愛い。
渋い顔が、目を見開き驚きの顔になる。
そしてまだ残っている人参を、確かめながら口にする。
「人参が美味しいんでしょ?」
遥はどうよ! とばかりの顔している。
「美味しい…なんで…」
「尊の腕前の成せる技かな。昔から嫌いな物を克服させるの得意だったものね」
「凄い…初めて人参が美味しいと思った」
それを聞いていた優は、ふて腐れて人参を食べ出した。
優が佐倉に張り合っている姿に、みんなで笑ってしまった。
「うまいっ。悔しいけど、やっぱり尊凄いじゃん」
二週間前には想像出来ない位、和やかな雰囲気で過ごせていた。
「尊、また暫く会えないわね」
「そのうち遊びに行くよ」
「その時は真琴も来てよね!」
優がちゃっかり便乗する。
「うん。行くよ」
優のお願いに、佐倉は笑顔で応える。
優は佐倉の手を取った。
「尊に苛められたりしたら、おれに連絡しろよ」
「ありがとう」
ふわっと笑いかける佐倉の姿にドキッとした。
これだけの事なのに、佐倉に色気を感じる。
「優君またね…」
佐倉の笑顔にやられたのは、オレだけじゃなかったようだ。
優は…佐倉に抱き付いた。そして何やら内緒話。
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