優(まさる)

11/11
前へ
/276ページ
次へ
優君のような子が相手だと、あんな風に抱き付かれても拒絶反応が出ないのが分かった。 それだけでも少しほっとした。 いくらなんでも、優君を突き飛ばさずに済んだのだから。 「メールちょうだいね!」 元気に手を振る姿に癒されていた。 「あいつ…何考えてんだか…」 尊さんの言葉に笑ってしまった。 優君に対する愛しさが滲んでる。 こう言う所が尊さんらしくて好きなんだ。 気持ちが暖かくなる。 「ありがとう。優が世話になった…」 「えっ?」 「あいつ…強がってるけど、親の離婚で傷付いてない筈がないんだ。 最初しょげていたのに、佐倉さんの所に行くようになって元気になったみたいで…ありがとう」 「ボクは別に…」 「ありがとう」 尊さんの和かな微笑みに、ボクの心臓が跳ね上がる。 どうしよう…ドキドキし過ぎて、まともに顔を見れない。 『あんな良い奴、なかなかいないよ。 ちゃんと捕まえていないと誰かに捕られちゃうかんな!』 優君の言葉が頭を過る。 彼等が来た時、ボクはこの世の終わりのような心境だった。 それが今は…小さな理解者が出来た。 優君が来て、ボクも元気になった。 心が楽になったよ。 『好きだろ?』 あぁ、そうだね。 やっぱり好きだよ…大好き。 ボクは心のなかで呟いた。 もう冬なのに、心の中はポカポカだった。 .
/276ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1859人が本棚に入れています
本棚に追加