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オレは眠っている佐倉の顔をまじまじと見詰めた。
この愛しい人を…
助けたい。
守りたい。
この人の全てを…
日が暮れかけた頃佐倉は目を覚ました。
随分楽になったようで、自分で起き上がると、足元をキョロキョロ見ていたが、靴がないことに気が付いた。
それに下を向いただけでクラ~ッと身体が揺れ、自力での歩行はまだ危ない。
オレは両手を出して、そのまま抱き抱えようとしたら、片手で待ってと止められた。
「恥ずかしい…から…」
下を向いてしまった。
確かに…外来を横抱きで運ばれるなんて、あり得ないか…
「じゃあ、こっち」
背中を向けてしゃがんだ。
熱のせいで何時もよりも増した佐倉の色っぽさに、ノックアウト寸前だ。
暫し間があいた。
今までの佐倉との距離を考えると、佐倉が背負われる事に同意する…
まぁ~無理な事だな。
どうせ車までだから、オレの靴を履いてもらって…
いや、何処かに車イスがなかっただろうか…
そう考えて立ち上がろうと思った時、肩に手が置かれた。
「ごめん」
小さな声が聞こえたと思うとすぐに、背中に佐倉の体温とコロンの香り。
首に回された腕と心地よい重み。
背中から抱き付かれたみたいで…鼓動の速さに胸が痛い位だった。
オレの耳元に佐倉の息が掛かる。
「ごめんね」
呟かれる佐倉の声に、ゾクゾクと背筋が痺れた。
身体が火照ってどうにかなりそうだ。
「病人は余計な事に気を使わなくて良いんだよ」
オレの精一杯の強がりだった。
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