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作業場の椅子に佐倉を座らせると、暖炉に火をおこした。
自分の部屋からソファーベッドを出して、暖炉の傍に運び、佐倉を椅子から抱き上げ移動した。
佐倉はすっかり諦めたのか、抱き上げられる事に抵抗しなかった。
このまま抱き締めたら…
そんな妄想をしてしまう程、無防備だった。
作業部屋は、キッチンやロフトまで吹き抜けになっていて暖房効率が悪くなるが、ベッドルームに二人分の布団を敷くスペースがないし仕方がない。
「佐倉さん、何かたべられそう?薬飲むのに何か食べた方が良いから」
「はい」
「準備するから、それまで横になって休んでて」
「ありがとう」
布団を顎まですっぽり被り応えた。
テレビを佐倉の方に向けてつけると、調度大雪の状況についてのニュースが流れていた。
佐倉はぼんやりとテレビを見ている。
「かなり積もるみたい」
佐倉がポツリと呟く。
暖炉周りがほんわかと暖かくなってきた。
オレはキッチンに移り、張り切って調理を始めた。
お粥だと時間がかかるので、炊飯器にある白米で雑炊を作った。
熱があるから、他にさっぱりしたフルーツでも……
誰かの為に作るのは、本当に楽しい。
料理を作るのは好きだが、誰かの為に作り…一緒に食べる――
そんな生活はとても楽しいに違いない。
オレは、ふと守男さんを思い出していた。
マリさんと守男さんのように、自分が誰かと生活を伴にする――――
そんな未来が思い描けず、モヤモヤした不安とも怒りとも付かない気持ちに包まれた。
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