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いつものように変化のない
その中庭を眺めていると
いつの間に入って来たのか
ベンチにいる君を見つけた
小柄で綺麗な黒い髪が特徴の君を
「珍しいな……」
僕はぼそりと呟くと
君に声をかけようか迷ったけれど
いきなり声をかけては驚かせてしまうかも
と思ったからベンチに座る君を
ただ眺めるだけにした
君は微動だにせず
ずっと同じ所を見ているだけだったね
何を見ているのだろうかと
君の視点の先を僕も目で追ってみたけれど
そこには何もなかった
一体君は何をだろうか?
しばらくそうして眺めていると
『――検診の時間です。院内の――』
僕には感情の感じられない
無機質なアナウンスが響いた
すると今では動かなかった君は
ベンチから立って離れると
そのままどこかにいってしまった
「まぁ、そうだよな……」
あんなアナウンスが流れれば
この病院内の誰だって動くだろう
…………、
それにしても可愛かったな……
変化のないあの中庭にも、僕にも
ちょっとした変化をくれた君は
また来てくれるだろうか
そう考えていると
僕の部屋の扉が開いた
検診の人が来たのだろう
いくら見ても無駄なくせに……、
そう思っていても僕はその医者の方へ
視線を向け今日の検診を受けた
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