件名:殺してみませんか

1/5
前へ
/74ページ
次へ

件名:殺してみませんか

 人を殺してみたいと思ったことはありませんか?  ――いえ、言い方が間違っていましたね。  あなたはそう考えたことがあるはずです。  衝動的にでも、胸の奥に巣くうような抑制的なものだとしても、一度くらいあるでしょう。  でなければこれを見ているわけがないのですから。  警察に捕まったら? 罪悪感? そんなことは考えなくてもいいのです。  僕を――殺してみませんか?  殺されてもいいのかなどという、僕に対する心配は必要ありません。  そんなことは愚問です。僕の心情なんてどうだっていいのです。  ただ、あなたの欲望を満たしてあげるという、それだけのことなのです。  罪のない人の命を奪ったという罪悪感に見舞われるよりも、同意の上で殺したほうがあなたも随分と気が楽でしょう?  場所も道具もシチュエーションも、何もかもこちらで用意させていただきます。  あなたは、あなたの中にある「殺意」だけを温めておけばいいのです。  さあ、前置きはこれくらいにしておきましょう。  決断を急ぐことはありません。  説明を聞きながら、じっくりと考えてみてください。  僕の殺し方の一例をお教えいたしましょう。
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加