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その人との出逢いは,唐突。
いつものように皆が一時限目の授業を受けている頃を見計らって,伊織さんに車で送ってもらい登校する。
人気のない廊下を選びながら歩き始めた。いつも誰かに逢わないかひやひやだ。
手首につけた鈴のブレスレットをしゃらん,と鳴らしながらカウンセリング室へ向かう。
これは伊織さんがくれたもの。声が出ないわたしのために買ってきてくれた。強く何度も何度も打ち鳴らせば伊織さんがすぐに駈け付けてくれる約束なのだ。
だからわたしは肌身離さずつけていた。
(あ…もうすぐ伊織さんの誕生日だ……)
何をあげようかな。
いつもお世話になっているし特別な日にしたい。ご馳走も作らなきゃ。
(プレゼント……プレゼント)
呪文のようにプレゼントと唱えながら角を曲がる。
――ドンッ
途端誰かに弾き飛ばされてしりもちをついてしまった。
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