間章 白騎士と臆病者

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「ひッ」「なにしやがった!」「てめぇ!」  わめく残り三人の男たちからも微弱な魔力の流れを感じる。斗夜の能力的に三人ほぼ同時に叩き伏せることも出来るが、それでは力の加減が出来るか不安だった。  斗夜は立ち止り、すっと両手を突き出す。それに追従するかように三人の男の手も上がった。  斗夜の両手に魔力の奔流が収束される。突き出された斗夜の両手に展開するのは玉虫色の方陣。  自分自身の記憶のなかではこれが初めての発導となる。しかしなんのためらいもなく、隠されたその顔は愉悦に歪んで―― 『三叉の閃光(トライデント・レイ)』    刹那瞬いたのは“三色の”光。方陣から放たれた魔力の奔流は赤、青、緑、三つの属性の色をほとばしらせていた。矢のように放たれたそれは貫くように男たちに襲いかかった。    ――魔物の瞳は黒い。それは黒すぎるほどに。  魔導士とは違い、魔物に特化した属性などはない。地水火風全ての属性が均衡を保って存在している。それゆえ魔物は違う属性を同時に使うことが出来た。  闇をくりぬいたような瞳の色はそのためである。  尋常ならぬ身体能力に強力な魔導。そんな最強ともいえる魔物が魔導士たちに敗れた理由――それは魔物である斗夜でさえ知らない。否、知っているのかもしれないがその記憶にはなかった。  ――やってしまった。僕はなんてことを……。  呻く黒づくめの四人をあたふた、きょろきょろと斗夜は見ていた。幸い死んではいない。  発導したときの記憶は夢のようにおぼろげで、気づいたときには全員が倒れ、自分は笑っていた。  ――なにがホワイトナイトだ! 発導してにやついて、人が傷つくのを笑って……なんでそこだけ臆病じゃないんだよ! やっぱり僕は魔物だ。なにがホワイトナイトだ! ごめんなさい、ごめんなさい……。  倒れているのは「悪」なのにどうも自分が悪い気がしてならない。なんだか本物のホワイトナイトにも悪い気がしてくる。臆病風が再びびゅーびゅーと吹き始める。
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