―第1章―記憶喪失

11/11
前へ
/11ページ
次へ
「本当になんでもないんだ」 小さくそう答えれば敦から逃げるように立ち去った。もう既に胸はいっぱいいっぱいで。溢れそうなのを必死に我慢している。 きっと今、口を開いたら傷付けてしまう。今までの思い出も大切な人さえも。 暗い道を独りで歩く。通いなれたこの道をまっすぐ行けば自分の家に着く。 後もう少しで着く、というところで携帯が震えた。着信を見れば「臣」の文字。 会いたいような会いたくないような、そんな複雑な心境を抱えながらメールに書いてあったように臣の家に向かう。自分の家を後ろに、相手だけを考えながら。 .
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加