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「本当になんでもないんだ」
小さくそう答えれば敦から逃げるように立ち去った。もう既に胸はいっぱいいっぱいで。溢れそうなのを必死に我慢している。
きっと今、口を開いたら傷付けてしまう。今までの思い出も大切な人さえも。
暗い道を独りで歩く。通いなれたこの道をまっすぐ行けば自分の家に着く。
後もう少しで着く、というところで携帯が震えた。着信を見れば「臣」の文字。
会いたいような会いたくないような、そんな複雑な心境を抱えながらメールに書いてあったように臣の家に向かう。自分の家を後ろに、相手だけを考えながら。
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