序章「幸せの歌」

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まあ朝食は大体が昨晩の残り物と味噌汁、漬物、白飯である。 簡単な料理でも、うちの姉は基本的に文句を言わない。 味付けには少々口うるさいが。 「……薄い」 「え、まだ薄いの? 結構味噌多めに入れたんだけどな」 「ん」 味噌汁が入ったままのお椀をこちらへ差し出してくる。 味噌追加がご所望らしい。 俺は基本的に薄味が好みなので、姉の分だけお椀に入れてから味を調節している。 っていうか人間はあまり濃い味のものを食べ過ぎても体に良くないのではないか。 度々そう思い、薄味のものを出すのだが突っ返されることが多い。 あまりにしつこくすると蹴られたり、夢想封印という妖怪退治用の必殺技が飛んでくるので見極めが大切だ。 「はい、どうぞ」 「ん」 受け取ったと同時に音を立てずにすすった。 「……」 ちゃぶ台にそのまま置く。 どうやらお気に召したらしい。 ホットひと安心。 俺も対面に座って一緒に食べ始める。 ボリボリと、キュウリのぬか漬けを食べる音だけが食卓に響き渡る。 うーん、今日は何するかなぁ。
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