~序章~

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O県から15㎞程沖へ行った所に浮かぶ島。今でこそ無人島と化したその島は、江戸時代初期までは人が住んでいた。人々は漁業で生計を立て、貧しくはあったが、ひっそりと幸せに暮らしていた。しかし、5,000人程いた人口は徐々に減少し、江戸後期には完全な無人島となってしまった。 歴史には、伝染病が蔓延したことが人口減少の原因だと記されている。 しかし、人々が伝承してきた話は、歴史とは異なるものだった。 その島には昔から鬼が棲むと言われてきた。ただ、その島では鬼は、恐ろしいものという対象ではない。島民は月に一度、鬼を祭っている山へ供物を持っていき、大漁を祈願した。この島では鬼は神のように敬われ、「鬼様」と呼ばれていた。 だが、ある時、本土から来た行商人が鬼への供物の宝石を盗んで逃げた。 怒った鬼がその姿を現わし、島民の首を一つ残らず抜いてしまったのだという。 それから本土の人々はその島のことを、恐れを込めて、鬼が棲む島、「鬼ヶ島」と呼び、誰も近づくことはなかった。
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