二、空き家

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二、空き家

三人が鬼ヶ島に到着する頃、青空は消え、空一面に暗い雲がかかっていた。 「おいおい、曇ってきやがった」 黒田がそういいながら、ボートを岸のそばの木にくくりつける。 「なんか、ほんとに鬼が出そうな雰囲気だね」 ニヤニヤしながら青木が言う。 島はたくさんの木や雑草が覆い茂り、砂浜から少し入ると、そこはもうジャングルといった感じだ。 まもなく雨が降り始める。パラパラと降ってきたかと思うと、とたんにどしゃぶりになった。しかも雷まで鳴りだした。 「おいおい!これじゃテントなんて張れないよ。ちくしょう」 黒田が吐き捨てる。 すると、青木がジャングルを指差して叫んだ。 「おい!あれ家じゃないか?」 指した方向を見ると、確かに屋根らしきものが見える。俺たちは一目散に駆け出した。 屋敷までの道は、以前誰かが通っていたのか、多少通りやすくなっていた。とにかく雨や雷から逃げたい一心で三人は玄関に転がり込んだ。 玄関は吹き抜けのホールになっていて、暖炉もあった。 「なんだこの家…。むちゃくちゃでかいぜ」 黒田はホールを見上げて言った。奥に向かって廊下が伸びている。暗くてよく見えないが、かなり広い屋敷のようだ。 「そういえば、何年か前にどこかの金持ちがこの島に別荘を建てたって噂があったな」 青木が言う。屋敷が暗いため、青白い顔がますます白く見える。 しかし今は使われていないのだろう。屋敷の中はひどく埃っぽい。 「ふーん。まあいいや。ここ使わせてもらおうぜ。とりあえず、雨が上がったら海で遊ばないとな」 黒田は鞄をごそごそしている。どうやら水着を探しているらしい。
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