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高峰 美奈子、21歳。同居中の彼氏あり。
三階、302号室。
夜。今日の夜空はいつもより、燦然と輝く星によって少しばかり明るかった。
「うるせー!!酒を飲んで悪いか!出てけクソ野郎!」
302号室で、その声は響いた。
美奈子は同居中の彼氏に思い切り殴られ、それでも倒れはしなかった。
「あんたは酒癖悪いから!」
「るせーんだよ!!俺の勝手だろうがよ!」
次に美奈子は腹に一発、蹴りを入れられた。
こればかりは、さすがの美奈子も腹を押さえざるをえなかった。
腹を押さえながら、出しづらい声を搾りきった。
「わ、分かったよ!出てってやるよ!」
美奈子がドアを強く閉めた後も、彼氏の昌宏は酒の入った缶を傾けていた。
外に出ると、息が白かった。
いちおう厚着はしてきたが、やはり肌寒かった。
美奈子はダウンジャケットのポケットに手を突っ込んで、マンションの屋上へ向かった。
なぜ屋上に向かうかは、私には分からない。
でも、外の世界に私をかくまってくれる人は記憶をかき出しても見当たることはなかった。
だから、この日、私は彼らに会うことが出来たのだ。
マンション難民?ルームレス?
呼び方は何でもいい、だって私自身、その仲間に入っているのだから。
コツ
コツ
と、階段に靴が当たる音が、眩しい夜空と肌寒いマンションに響き渡った。
―屋上マンション―
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