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屋上に着き、誰も触ったことも無いのか、と思わせるほどに新品なドアを閉めた。
長方形型のマンションなため、奥行きが凄い。
いったい何メートルくらいあるのだろう、小学校のプールよりはあるだろう。
少し砂利混じりのコンクリートに、リズム良く足音が鳴る。フェンスに両腕を乗せ、空に向かって息を吐いてみた。
すると、その白い息は、部屋の前で息をした時よりも長生きした。
しかし、その息も数秒もしない内に宙に溶けてしまった。
ダウンジャケットのチャックを半分開け、手をその中に入れる。
無い…胸ポケットに入れたはずの煙草が無い…
そうか、あの時
私の頭に浮かんだのは、昌宏に蹴られた時の記憶、少し屈んだだけなのに…
しばらく美奈子は、空に向けて息を飛ばしていた。
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