信じぬ者の憂鬱、信じる者の幸福

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まず自分の朝食は諦めた。そう、自分だけなら良かったのだ。俺は姉と二人暮らしなのだが、コイツが厄介なのだ。夜型なために生活のサイクルが合わない。しかしながら、家計の柱を養ってくれているので飯は俺が準備しなければいけない。トーストに目玉焼きをこしらえ、姉を叩き起こし制服に着替えて家を出た。走ればまだ間に合う。 次に、信号を諦めた。運良く青だったが、渡り終えて点滅した瞬間に見知らぬ婆さんが向かいから来た。すれ違って数秒後、クラクションが後ろから聞こえた。横断歩道の真ん中でさっきの婆さんが持っていた買い物袋を盛大にぶちまけてオロオロしていた。どうするか迷ったが、戻って手伝った。本気で走ればまだ間に合う。 最後に、間に合った電車を諦めた。俺が乗ろうとした電車の前でOLらしい女性が何か落とした。走ってきて息が上がっていた俺はハァハァ言いながらそれを拾って渡した。便秘に効く薬だった。奪うように受け取ったその女性は足早に電車に乗っていった。ほぼ満員のその電車にだ。俺は乗らなければ遅刻確定だが、変な誤解を受けかねないと判断し、電車を見送った。 遅刻確定。
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