信じぬ者の憂鬱、信じる者の幸福

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無理をすれば飲めないブラックコーヒーを片手に次の電車を待つ。奢ってもらった手前、文句は言えない。しかしながら痛く胃にしみる。 話を聞けば俺を玄関で待っていて、ダッシュする俺について来ていたのだという。 「なんで声かけなかったの?ま、気づかなかなった俺が悪いんだけどさ」 「いえ、遅刻しそうだったのはバタバタ感から伝わってきたので、時間がもったいないかなと」 「で、俺の不幸さを全部見ていたと?」 「そんなことありません。私は感動しました。時間がないのに、お姉さんの朝食を作り、お婆さんを助け、女性の為にハァハァいいながらもくすりを拾ってあげる姿に!」 「ハァハァ言うな、下手したら変態扱いだったんだぞ?」 「それでも正しいことだと思いますし、立派だと思いますよ」 真っ直ぐに言われるとなんか困る。 「そいつはどーも」 釈然としない表情で視線を逸らす。対照的に彼女はニコニコと満足げな笑みだった。
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