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電車は問題なくホームに入れた。
「ばっかやろう!」
俺は猫に言えなかった言葉を隣人になった女の子に言った。白線の内側で抱えながら。幸運にも死ななかった。が、まだ言葉が続く。
「何考えてやがる!死ぬとこだったんだぞ!?」
間一髪なんて実体験をするなんて思ってもいなかった。猫を抱えた彼女を引っ張り上げられたのは偶然に過ぎない。
「いや、でも助かりましたよ、私も猫さんも。あなたがすぐ引っ張ってくれたから」
「んなの、結果論だろーがっ!」
「でも、私が行かなければあなたが行ったでしょう?」
「ぅ」
確かに迷いながらも行って、もしかしたら俺が逝ってたかも知れない。
「ハァ、わぁーったよ。ったく」
ホームは無人とは言え、流石に具合が悪いので立ち上がった。
「わっ、と」
彼女が抱えていた猫が逃げて行った。笑顔で彼女が見送る。恩知らずな猫だ。
「あ、そうだ、だいじなことを忘れてました」
「何だよ?、今更」
「私は、木春 祈(こはる いのり
)、あなたは?」
一気に気が抜けた。ついでに毒気も抜かれた。
「本当今更だな」
苦笑しながらも少しだけそれだけじゃない笑みも零れる。
「俺は、日月 流星(ひづき りゅうせい)」
いつもなら自分の名前は変わってるから言いたくないのだが、珍しくすんなりと言えてしまった。
「りゅうせいってどんな漢字なんですか?」
なんか恥ずかしいが先に名乗られたのだ、言うのが礼儀か。
「‥流れ星って書いて流星だ」
「わぁー!」
なんともキラキラした目で見られた。流石にこの反応は予想外だった。まだ、変な目で見られた方がマシな気がした。
「私の名前の祈って、祈りは届くの祈りです。流れ星に祈る、これは運命の出会いです!私の願いは叶います!わたしと世界を救いましょう!」
「へ?」
これが、俺たちの世界を救う運命の
出会いだった。再三言うが、もちろん俺の台詞ではない。絶対言わない。
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