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「ね、ねえ、幸生」
帰り支度をしている時、不意に夢が話しかけて来た。
「どうした?」
「うん、今日も一緒に帰らないかなって」
「え、何でだ?」
「な、何でって言われても……」
それっきり夢はうつむいてしまい、何を言っているのかが良くわからない。
「……ま、いいか。
さっさと行こうぜ」
「う、うん」
昨日と同じ様にして、俺たちは帰路につく。
……
「……」
「……」
(……デジャヴだな)
今日も今日とて、話す事が無い。と言うより夢に話があるはずなのに、中々それを切り出そうとはしない。
「夢、作曲はどうだ?
って言っても、まだ一日しか経ってないけど」
結局、俺から話題を提供する。
「え、う、うん、一応イメージは出来たよ」
「そうか」
だがその話はそこで終わり、再び沈黙の時間が流れる。
(ま、いいか。気長に夢の話を待つとしよう)
と思った俺は、そのまま何も話すことなく進んでいたのだが……
(あれ、家に着いたぞ?)
結局それまで、夢は一言も口を開かなかった。
「おい夢、どうしたんだ?
何か用事があるんじゃなかったのか?」
俺はたまらず、夢にそう尋ねる。
「……きゃ……」
「ん、何だ?」
「用事がなきゃ、一緒に帰っちゃいけないの……?」
夢が不満そうな、そして悲しそうな目つきで俺にそう尋ねてくる。
「え……。
いや、別にそんな事はないけどさ」
「だったらいいじゃない。
私たち……、幼馴染なんだもん」
「……」
「それじゃあね、また明日」
夢はそう言うと、駆け足で自分の家に入って行った。
「どうしたって言うんだ?
夢の奴、今までに無いくらい強い口調だったな」
あんなに強く何かを主張する夢を、俺は自分の記憶にある限りでは見た事がない。
「幼馴染だから、か。
何で今更そんな事を言い出したんだ?」
夢の不思議な言動に首をひねりつつ、俺は家の中に入った。
……
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